いつも心に
部屋を片付けていた。
久しぶりに山積したものを本来彼らの居るべき場所に返してやると、どうも埃が溜まっているようだ。部屋の隅、物が置いてあった場所、棚の隙間…家を空けることが多いとまるで古い家にたどり着いてしまったようにさえ思う。埃を掃き、一息つくと今度は山積みの書類を目の当たりにする。
はあ…
ため息が漏れても仕方あるまい。そこには紙の山があるのだ(古いもので10年近く前のものもあったと思われる)。半透明の薄いプラスチック板に挟まれた無数の紙束一枚一枚に指を通す。
なんでこんなものを今まで取っておいたのだろうか。そう思うものも多々あった。懐かしくて大切に仕舞いなおしたものもあった。
取っておくものと捨てるものに分けてまとめて片付けは一通り終わり、気づくとリビングからはよだれが出るような匂いが漂ってきた。
価値観は、思ったよりも変化を続けるものなのかもしれない。
あれだけ大事だったおもちゃは、今では箪笥の奥に眠っている。
大事に貯めていた過去の成績表は、今では意味を成していない。
昨日の宝物は今日のガラクタなのか。
荷物も心も整えるときには”整理”という言葉をよく使う。
心の整理をした時にも、価値観は日々変わっていくのだろう。
抱いた夢は、野心は、いつしか消えてしまうのだろうか。
たったの一つだけでいい。
捨てられないぬいぐるみを枕元に置くように、すぐに手の届く引き出しに揺るがない心をそっと仕舞っておきたい。