素の顔
大人になると素直じゃなくなる。時には嘘も吐く。
それは悪いことなのか。
『嘘も方便』という諺を考えるとよくわかる。嘘を吐いたほうが無難な場面も出てくる。幼いころには考えられなかった複雑な思考回路が構築される成長の一環ともいえるだろう。
むしろ大人に対して”素直”というのは失礼にあたることもあろう。幼いころは誉め言葉であった言葉も年代に応じてニュアンスが変わるのだ。『正直になりなさい』と言われていたのはもう過去の話。今では『馬鹿正直』だと軽蔑される。
大人に習ったことを大人に叱られるとはなんと滑稽な話か。
実際、そういった場面はよくある。
昨今の政治ニュースを見ていると随所に見受けられるだろう。you should be...そう言われて育ったはずの大人もいとも簡単に破っている。
挙句、大人は大人に対してこういうのだろう
『もっと上手く生きなさい』
と。
…この流れでいうと、老人になったときには”うまく生きること”を軽蔑されるのだろうか。真偽のほどは今の私にはわからない。老人になるのが楽しみである。
先日久しぶりに高校時代の友人に会った。煌びやかな大学生活を送る友は御転婆であった高校の時より女性らしく、しなやかな印象を受けた。
化粧気のない私は一緒に写真を撮ってもらったとき僅かな惨めさを感じた。
なるほど、化粧とは素顔を隠すためのものというのも一理ある。