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本好き、音楽好き医大生女子の日々

弥生の雨

 

春は、雨の多い季節だ。

 

入学試験や卒業式も多くは幕を閉じた。新生活に胸を膨らませるのか、はたまた予備校のパンフレットに手を伸ばすのか、新入生を迎えるのに心を亡くしているのか。おそらく多くの者が、3月までとは違う4月に向けて身支度をしているころだろう。

 

この春、私は大学生になる。

 

二年間浪人した私も愈々大学生に仲間入りできるわけだ。

昨今の大学進学率は50%を超えるという。その中でのたった一人の大学入学なんて雀の涙ほどだ。大学進学を目指す者は一律”受験生”と呼ばれ一括りにされる。私が通っていた予備校は、それこそ”受験生”の集まる最たる場だ。

しかし、彼らにはそれぞれドラマがあった。女子高出身である私にとって、共学のような環境は新鮮だった。男友達が増えた、”頑張る”の本当の意味を知った、恋もした。

 

浪人で得たものは学力なのか、合格なのか、それとも。

 

昔、父に言われた。

『お前は何かを達成したことがない。このまま終わるのか。』

そのときは反抗した。

今なら父の言ったことを理解できる気がする。

受験じゃなくてもよかったんだ。なんだっていい。花屋さんになることでも、アイドルでセンターになることでも、コマ回しの世界チャンピオンになることでも。

ただ『やる!』と決めたことを貫き、やり遂げれば。

 

 

 

幼稚園の時に無邪気に叫んでいた夢に、漸く一歩近づいた。

 

 

 

今年は心に暖かい雨が降りそうだ。